W杯の前にホームレスのW杯

もうすぐ開幕するサッカーW杯。でもホームレスの人だけが参加できる「ホームレス・ワールドカップ」というのが、毎年開催されているとは知らなかった。

きのうからクロスパルで「新潟国際映画祭」が開かれている。世界各国で製作されて、なかなか日本では観る機会がない作品が、2日間にわたっていくつか上映された。その中で最後に上映されたドキュメンタリー映画『ホームレス・ワールドカップ』を観てきたんだけど、なかなか興味深く面白かった。

ドラッグで実家を追い出されたアイルランド人、スラム街で生まれずっと貧しいままのケニア人、父の暴力に耐えかねて路上生活を始めたアメリカ人、内戦で家と家族を失ったアフガニスタン人など、ホームレスになる理由も国それぞれ。世界にはホームレス状態にある者が10億人いると聞くと驚いてしまう。

そんなホームレス状態の者だけで編成した各国代表が、南アフリカのケープタウンでミニサッカー世界一を目指し熱戦を繰り広げる。ホームレスとはいえ脚に覚えのある選手も多く、試合のシーンはなかなか迫力がある。そして多くの観客の前で熱戦を重ねるうちに、選手たちに変化が起こるのが感動的だ。

アメリカの代表選手は、幼い頃から続いた親の暴力ですっかりささくれ立っていた性格が、地元の人々との交流などを経て穏やかになっていく。難民だったアフガニスタンの選手は…ネタバレなので書かないけど、試合とは関係ないところで思いがけない出会いが。いいなぁ、こういうの。応援したくなる。

試合の勝ち負け以上に重要なのは、出場した選手たちが自己の存在意義や自信を取り戻すところだろう。大会が終わり、それぞれ国に帰って新たな一歩を踏み出すシーンは、見てて安心する。あ、でも全員がうまくいくわけではなくて…という衝撃的な現実も映し出される。やっぱり勝ち負けじゃないんだ。

このホームレス・ワールドカップには、日本も2011年に参加したようだ。1勝もできずに48ヵ国中最下位に終わったのだとか。日本のホームレスは、まだまだ世界レベルの人材は揃っていないということか。悲しむべきことなのか、喜ぶべきことなのか…。
・HOMELESS WORLD CUP 2011 野武士JAPAN IN PARIS
https://www.youtube.com/watch?v=SkjoFMBT2TQ&feature=youtube_gdata_player

国際映画祭で上映された作品は、来週シネウインドでも公開される。『ホームレス・ワールドカップ』も上映されるので、本物のサッカーW杯の前にぜひ。アフガニスタンの彼がその後どうなったのか、気になるなぁ…。

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